2013年10月30日水曜日

アメリカの経済成長は枯渇したのか?


Martin Anota"La croissance américaine est-elle épuisée ?"(17 septembre 2012)




ロバート・ゴードン(2012a, b)では、アメリカにおける長期での成長の動きについて、まずは2007年以前の大きな流れに立ち戻り、その次にアメリカ経済がこの先数十年で辿るであろう成長の道筋を検討している。この分析においては、例え大停滞が潜在成長に対して深刻な構造的影響を与えた可能性があるのだとしても、それは明示的に考慮から除外されている。またこの分析はアメリカ経済に焦点を当てている。というのも、19世紀末以降イギリスに変わって世界経済の中枢、世界の成長の原動力となって最先端技術と生活水準を伸ばし続けてきたのは、まさにアメリカ経済であるからだ。将来もはやアメリカが最先端技術を伸ばしていないとすれば、それは他の国が取って代わって伸ばしているか、そうした伸展が不可能であることが明らかとなり、成長の見通しがはっきりとした形で変化したからだろう。

ゴードンはいくつかの際立った事実を強調している。

1.1750年から2007年までの期間は、経済史上の例外であることが明らかとなる可能性がある。一人当たり実質GDPの成長は、1700年以前においてはほぼゼロだったのであり、GDPはこの時期から加速し始めた。この250年間と同じ速度で将来も成長が続く保証はない。

2.技術先進国における一人当たり生産量の成長は、1750年から20世紀中盤まで加速し、アメリカにおいては1928年から1950年にかけて頂点に達した。生産量の成長はそれ以降減速し続け、2100年には0.2%ととなる可能性がある。1700年以前においては、一人当たりの収入が2倍になるのには数世紀を要したが、アメリカにおける一人あたりの収入は1929年から1957年にかけてのたった28年で2倍となり、1957年から1988年にかけての30年でさらに倍増した。しかし21世紀においてこの成長は、2007年の水準が2倍となるのには2100年までかかるというほどまでにゆっくりとしたものとなる可能性がある。こうした半定常状態への収束は景気変動とは完全に無関係で、構造的な傾向だ。いくつもの先端分野で既に現れているとおり、生産性の増大、ひいては成長を行うのに決定的に重要となるイノベーションの伸展は、収穫逓減の壁にぶつかっている。

3.経済史においては3つの産業革命が存在している。最初は1750年から1830年にかけて起こった。この際の主要なイノベーションは蒸気機関、綿紡績、鉄道だ。その次の革命は1870年から1900年にかけて起こった。主要なイノベーションは発電、内燃機関、屋内の上下水だ。これら2つの革命においては、その経済に対する効果が完全に発揮されるまでに1世紀を要した。第2の革命によって起きたイノベーションは1960年代に経済を再度根底から変革した。70年代以降に観測された生産性の減速は、これらイノベーションによる可能性全部が完全に使われたことで説明できる。

4.第3の産業革命は60年代に始まって90年代にはその頂点に達し、インターネットバブルやニューエコノミーによる楽観論を引き起こした。パソコン、インターネット、携帯電話などがその主要なイノベーションだ。これによる生産性への影響は過去10年でかなりの程度弱まった。単純作業については、70年代から80年代によって機械による仕事の代替が起こった。2000年以降に起こったイノベーションによる生産性や生活水準に対する影響は、比較的にはごくわずかだ。

5.イノベーションの進展とは、最初のイノベーションの潜在力を完全に活用するための、一連のささやかな発明による漸進的な改良と捉えるべき。この進展は、最初の2つの産業革命においては100年かけて起こったのに対し、3つ目の革命においては非常に速く展開した。

6.現在進行中のイノベーションはこれからも生活水準の向上に寄与するが、これまでに比べればその速度は遅い。これは経済活動を引き起こすイノベーションの力が以前よりも弱まるということだけでなく、アメリカ経済がそれに加えて潜在成長力を強く押し下げる6つのマクロ動学的要因を抱えているからでもある。アメリカの成長率は、過去20年間のそれを大きく下回るだろう。さらに、一人当たり実質消費の成長は、下位99%の家計においては輪をかけて弱まる。

ゴードンはここでアメリカの成長の重しとなっている6つの制約を特定している。これら制約は2007年に既に顕在化しているが、今後数十年でより一層激しさを増すだろう。いくつかのものは他の先進国にも通ずるものであり、またいくつかはアメリカ特有のものだ。

1.人口分布の偏りは、過去においては経済発展にプラスの影響を与えたが、今後はそれとは逆方向に働くこととなる特異な事例だ。今日、ベビーブーマーたちは次々と引退生活に突入している。一人当たり労働時間は減少し、したがって一人当たり生産量は生産性よりもゆっくりと上昇することになる。平均寿命の向上が、この経済活動に対するマイナス効果を下支えするだろう。

2.アメリカでは、教育水準の上昇がここ20年頭打ちとなっている。高等教育費用の高騰が学生の負担の膨張を招き、それが低所得層の大学進学意欲を減退させているのだ。アメリカで教育システム達成度の国際ランク、特にPISA調査での後退が起きている。人種グループ間の学習到達度格差は広がっているのだ。ヒスパニックの学習達成度は低いため、教育人口比率における彼らの進展が国全体で見た到達度の下落につながっている。また、格差は男女間でも広がっている。

3.不平等の進展は、大多数の国民から成長の恩恵をはく奪している。1993年から2008年にかけての家計の実質所得の年間成長は平均1.3%であったが、この期間に起きた上昇分の半分以上は上位1%の家計が占めた。中期的に所得格差の拡大を逆転させる、ないし抑制するものは存在しないように見える。

4.グローバリゼーションと情報・通信技術の発展は、途上国の追い上げを加速し、先進国における賃金と実質所得の切り下げ圧力を上昇させる危険な相互作用となる。外注化や輸入は、アメリカの労働者を海外の労働者との競争に直接追いやるのだ。世界経済は、相対的に賃金が高い国にとっては痛手としかならない要素価格の強力な均等化の劇場なのであって、これはヘクシャー・オリーン・サミュエルソンの定理に従うところである。

5.地球温暖化への対応策の実施は、アメリカ経済に影響を及ぼすだろう。アメリカにおける炭素税の導入は、とりわけ燃料価格の上昇を招くことで、それ以外の物へ支出するための家計の予算を削ることとなる。それに対し、中国とインドにおいては依然として、より多量の温室効果ガスの排出を行っているが、環境財政政策によって自らの成長を制約することについては両者ともに沈黙を保っている。そうした方策は、今日の先進国が工業化を行った時期には課せられていなったものなのだ。

6.アメリカの経済成長に対する制約の最後{1} は、政府・民間債務の安定化だ。家計の債務解消は、回復への活力の足枷となっている。政府債務を持続可能な道筋へ引き戻すことも、GDP成長率にとっての重しとなる。

これら6つの大きな流れによる影響は数値で言えばどの程度になるだろうか。この問いに答えるにあたってゴードンは、一人当たり実質GDPの成長がイノベーションによって2007年以前の20年間のそれと同水準、つまり年率1.8%に保たれるという仮定をまず置いている。したがって、イノベーションが近いうちに起こり、インターネットと同レベルの影響を生産性に与えるということを彼は仮定している。こうした楽観的な仮定を置いてさえ、ベビーブーマーの現役引退によって成長率は1.6%に下がり、教育の躓きによってさらに1.4%へと下がる。不平等の上昇が続くのであれば、下位99%の家計の所得成長は年率1.4%となり、成長率は0.9%まで下がる。{2} 次に、グローバリゼーションとエネルギーへの課税強化のそれぞれが成長率を0.2%ずつ切り下げる。最後に、家計による債務解消、税の引上げ、所得移転の削減によって一人当たり実質GDPの成長率は0.2%にまで引き下げられる。{3} 債務の返済があるために、下位99%の家計による実質消費の伸びは実質GDPよりも低くなるだろう。{4}


{1}訳注1; 原文(une ultime contrainte)は「最終的な(究極的な)制約」との意になるが、元の論文では単に6つの逆風の中の最後という意味になっているので、後者に合わせた。

{2}訳注2; 原文は、「家計所得の成長が0.9%になる」という意味の文になっているが、元の論文と照らし合わせると誤りであるので、修正をした。

{3}訳注3; なおゴードンは、これらの数字はsuggestionであり、数字それ自体は重要でないとしている。というのも、この数値は1300年から1700年(つまりは産業革命以前)のイギリスの成長率である0.2%に合わせるように意図的に選ばれている。

{4}訳注4; 原文は、「実質消費の上昇は債務の返済よりもゆっくりとしたものになる」という意味の文となっているが、元の論文と照らし合わせると誤りであるので、修正をした。





参考文献

2013年10月2日水曜日

急停止と債務デフレ

Martin Anota "De l’arrêt soudain à la déflation par la dette"(29 septembre 2013) D'un champ l'autre


参考:本エントリで参照されているAccominottiとEichengreenのVOX論説が示している、大恐慌前の中欧諸国と昨今のユーロ危機の類似性は、クルーグマンも知らなかったと言って褒めてたりします。ただ、Anton KorinekとEnrique Mendoza (2013)によると急停止(Sudden Stop)後の回復は弱々しい(faible)、とアノタは書いています(原論文が有料で読んでないため詳細は分かりません)が、クルーグマン、あるいは急停止を最初に言い出したギレルモ・カルボ的にはそうでもないようです。


世界経済は金融不安の新たな波が押し寄せる前夜にあるのかもしれない。大停滞、ゼロレベルに限りなく近づいた先進国の政策金利、ユーロ圏のソブリン債危機の深化といった要因により、投資家はより利益のあがる投資機会を世界の他の場所に求めた。多くの新興国経済がそれによって、多大な資本流入の恩恵を受けた。市場は今、近い将来でのアメリカの金融政策の収縮を予測しているために、新興国は流入資本の引き上げによって国際収支上の危機を迎える可能性がある。新興国が現在経済成長の鈍化を迎えていると多くの指標が示しているが、そうした指標はこのシナリオが現実化する方向に動いている。

実際、アナリストたちは20年前と同じような出来事が再現されることを恐れている。すなわち、アメリカによる政策金利の引上げの直後、1994年12月20日からメキシコは後に「急停止(sudden stop)」と名付けられることとなるものを味わった。この急停止は、経常収支の突如の改善をもたらす、海外資本の流入の急激な逆流によって特徴づけられる。それによって海外からの資金調達ができなくなったメキシコ経済は、株価の崩壊、為替の大幅な減価、深刻な経済活動の収縮に見舞われ、その影響はおおむね大恐慌によるものと肩を並べるものだった。さらに、この現象はしばしば突如として波及する。メキシコの危機を例に挙げると、これは1995年のアルゼンチンでの急停止を引き起こし(この伝播は「テキーラ効果」と名付けられている)、その裏では1997年アジア通貨危機がとりわけ韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイを襲った。

こうした危機の波及によって、90年代後半には経済学者の関心が金融不安の研究へと向くことになったが、そうした研究はとりわけ発展途上経済に焦点を当てていたのであり、それらの研究者は先進国においては金融システムが十分に発達しており、経済政策も十分健全であるために、そうした事例とは無縁であると考えていた。しかし、2008年から2009年にかけての大停滞において複数ものヨーロッパの国(その当時はスペイン、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガル)が味わったのは、正しく資本流入の急停止であった。

Olivier Accominotti及びBarry Eichengreen (2013)は、そうした昨今のヨーロッパの事例と、大恐慌の直前に中欧諸国が経験した一連の騒動との間の多くの類似性を記している。1924年から1928年にかけて、ヨーロッパの多数の国が、2001年から2008年にかけてと全く同じように、それ以外の欧州各国と世界各地から多額の資本流入を得ていた。そしてこの双方の事例において、資本の流入先の各国はその多大な経常収支赤字をさらに悪化させた後に、急停止を経験している(それぞれ1929年と2009年に)。ドイツ、オーストリア、ハンガリーが当時抱えていた経常収支赤字は、今日のギリシャ、アイルランド、イタリア、スペイン、ポルトガルほどではなかったものの、三国が急停止に続いて経験した資本収支の収縮は、今日の事例におけるものよりも大きなものだった。確かに、ユーロ「周辺国」が2008年から2011年にかけて経験した民間資本流入の収縮は、独墺洪三国のそれよりも大きなものだったが、公的資本の上昇が経常収支の調整を和らげたのだ。AccominottiとEichengreenは、1929年から1931年にかけての中欧諸国が(90年代の際の新興国と全く同じように)騒乱に対して何よりもまず外貨準備を支払うしかなかった一方で、ユーロシステムはしたがって集団的な保険を提供したようだとこれを結論している。

Anton Korinek及びEnrique Mendoza (2013)は、1978年から2012年までに先進国、途上国で起こった様々な急停止から複数の事実を類型化したうえで参照している。典型的には、急停止は突然の経常収支ないし貿易収支改善という形をとった、資本移動の急激な逆流によって特徴づけられる。また、それに先行してGDPや消費、投資のトレンドを外れた成長を特徴とする拡大期間があり、貿易収支の悪化、為替レートの増価、株価の急上昇も起こる。急停止の後には、マクロ経済上の主要な集計(GDPで言えば消費と投資)が減少する。そして経済は深刻な景気後退を経験するが、その後には弱々しい回復が伴う。例えば、急停止の2年後において株式市場の回復は、失った分の5分の2でしかない。KorinekとMendozaは、急停止の影響は先進国と途上国では異なると指摘している。前者の回復は後者のそれと比較するとより遅い。また、新興国においては実質為替レートが急激に上昇した後に、急停止とそれに続く為替レートの正に崩壊が起こるという特徴がある一方で、先進国はそのような大きな動きは見せない。

Korinek及びMendoza (2013)によれば、急停止による金融波及メカニズムは、Irving Fisher (1933)が指摘した負債デフレ(debt-deflation) の展開と似通っているという。海外からの借入を行っており、なおかつ担保制約下にある経済を想定してみてもらいたい。拡大期においては、各主体は債務のレバレッジを引き上げ、したがって経常収支は反景気循環的になる。レバレッジが十分な水準にまで上ると、担保制約によって各主体は支出の減少を余儀なくされる。この総需要の下落は実質為替レート、相対価格、株価の崩壊を伴う。株式は担保として用いられているため、その価格の下落は各主体の抱える制約をさらに引締め、さらなる支出の減少を誘発する。したがって経済は、借入能力の下落、支出の下落、株価の下落の三者が互いに互いを引き起こす負のスパイラルへと囚われる。このメカニズムでは、経済主体が自国通貨とは異なる通貨建ての負債(例えば新興国における米ドル…もしくはユーロ圏の国におけるユーロ)を抱えていることが、よりいっそう裏目となる。

AccominottiとEichengreenは、1920年代および30年代における資本の移動を調査し、その決定要因を明らかにすることを試みた。それにより、各国家特有の事情、とくに借入能力は中欧諸国に対する大量の資本流入と急停止の説明とならないことが判明した。その代わりに国際資本移動の鍵となる決定要因は、国際資本市場の状況(借入国内の状況にとって外生的)である。すなわち、AccominottiとEichengreenは所与の金融センターから生じる資本の量と、(訳注;その同じ市場における)長期金利及び市場のボラティリティ―との間の強い負の相関を指摘している。対象としている期間は異なるものの、Eichengreenの結論は、リスクの認知が過去30年間における資本の流れに対して大きな役割を果たしたという、昨今の複数の研究(とりわけHélène Reyの)のそれと整合的である。




参考文献

2013年10月1日火曜日

財政緊縮は不平等を上昇させる(2)


Martin Anota "L’austérité accroît les inégalités (bis)"(18 septembre 2013) D'un champ l'autre





大停滞期における債務比率の上昇は、多くの政府をして債務持続性や債券市場からの信頼を維持するための財政緊縮策の実施に走らせた。経済がその潜在力へ回復しておらず、完全雇用からはかけ離れているうちは、拡張的政策を続けなければならなかったのにも関わらず、その反対に政府は公的支出の削減や税の引き上げの双方もしくは一方によって、順景気循環的な政策を選択した。こうした施策は経済活動の回復を遅らせ、特定の国に置いては正真正銘の経済収縮さえ引き起こした可能性があるが、それだけでなく公的債務の更なる上昇をもたらした可能性もある。債券市場の安定はつまるところ、欧州中央銀行が最後の貸し手としての役割を完全に果たすというコミットメントによっているだけに、これらの財政再建策は結局のところなおさら空しいものであったように思える。

先般、Laurence Ball, Davide Furceri, Daniel Leigh及びPrakash Loungani (2013)は、予算緊縮の各事例がどのように所得不平等を悪化させたかを調査した。彼らの研究は、財政緊縮策が所得分配に影響を与えた可能性のある様々な経路を明らかにすることに特に力点を置いていた。IMFによる新たなワーキングペーパー、Jaejoon Woo, Elva Bova, Tidiane Kinda及びSophia Zhang (2013)は、財政再建の事例に特に焦点をあてつつ、多数の先進国及び途上国からなるサンプルを用い、過去三十年間における財政政策の所得に対する影響を分析している。彼らの分析結果は、財政再建が多様な経路、とりわけ失業に対する効果を通じて不平等を上昇させる可能性があることを示唆しており、Ballらによる先行研究の結果とも整合的である。Wooらの分析によれば、GDPの1パーセントポイントの財政再建は、平均して0.4から0.7%のその後2年間でのジニ係数の上昇と関係している。こうした不平等の上昇のうち、15から20%は失業の悪化によって説明される。さらに、財政再建が公的支出の削減によるものである場合、税の引き上げによるものと比べて、不平等を悪化させる可能性がいっそう高まる。

Wooらは続いて、税の累進性と社会給付は、可処分所得がより低い層と関係していると指摘する。さらに、中低所得層の教育や労働者訓練を推進することによって、財政政策は所得分配と経済成長に好影響をもたらしうる。高技能職に有利となる技術進歩が不平等を進展させる一方で、進学率の上昇は不平等の減少と関連している。80年代以降先進国によって行われている、社会保障を気前の良さや所得税の累進性を減じるという改革が、その年代以降観察されている不平等の上昇において大きな役割を果たしたという本論文の主張を、上記全ての結果が裏付けている。

昨今の世界危機に関して、このIMFによる研究は(先行研究と全く同様に)、経済が腰の強い成長を取り戻さないままになされた先進国による2010年以降の予算引締めは、所得分配にとりわけ悪い影響をもたらしたことを示唆している。しかしながら、不平等に関する最新のデータは多くの国において2010年中ごろ迄のものであり、こうした効果を推計するためのデータ利用上の制限を著者らは抱えている。それら最新のデータはしかしながら、不平等が最も増大したのは最も大きな失業の上昇を経験した国であり、それよりは程度は小さいながら、最も景気刺激策の自由裁量が小さかった国もまたそうであることを示している(図を参照)。著者らは、利用可能な最新データが2011年のものまであるアイルランド経済に特に注目している。アイルランドでは、危機の初期においては資本所得の減少(そしてその結果としての高所得層の所得減少)、税の引き上げ、所得移転の増加によって不平等が減少した。しかし、景気停滞の深化とその後の財政政策の引き締めにより、不平等はその後に悪化した。この不平等の上昇は、公的債務比率の安定化を難しくする総需要の減退を伴う、経済成長の圧迫要因であっただけに、なおいっそう時期の悪いものであった。これら二つのIMFワーキングペーパーは、したがってNGOオックスファムと結論を一にしている。数日前オックスファムは、欧州において実施された様々な緊縮策は、2015年には2500万人にまで及ぶ人々を新たに貧困に追いやる可能性があるとしている。


図:欧州各国における失業とジニ係数の進展(2007-2010)





緊縮策を遅らせないのであれば、政府が財政再建策の社会的影響を最小化するよう著者らは主張している。そうした場合には、税の累進性や再分配システムが、公的支出削減による所得分配への影響の緩和に貢献しうる。著者らの研究は、Santiago Acosta-Ormaechea及びAtsuyoshi Morozumi(2013)によるそれと全く同様に、財政健全化のための制約を抱えている時にも、政府は教育支出をその犠牲とすべきではないという主張を行っている。





Références